Interview 16 金融の街・フランクフルトで経理

ドイツ最大の金融の中心地、フランクフルトで未経験から経理を担当するC.H.さんのインタビュー。働きながら簿記の資格を取得し、現在は会計士の資格取得に向けさらなるステップアップを目指しています。

C.H さんProfile

大学卒業後、ワーキングホリデーでカナダに滞在、その後オーストリアのウィーン大学を経て、ドイツハイデルベルク大学で政治学を修了。卒業後フランクフルトにある日系コンサルティング会社に就職、転職を経て現在日系の会社で経理・財務を担当。就業の傍ら簿記のコースを修了、現在は会計士の資格取得のためのコースに通う。

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OrangeCareer 中石(以下、N) : 現在はフランクフルトで経理・財務の仕事をされているということですが、学校を卒業してからのヒストリーをお聞かせください。

C.H.さん(以下、H ) : 日本で大学を卒業してから、カナダにワーキングホリデーに行き、大学2校で英語を学びました。そこで知り合った人の影響を受け、ドイツ語に興味を持ち、そのままオーストリアのウィーン大学に編入しました。同じドイツ語圏でもオーストリアは学費が掛かるのですが、ドイツでは大学の授業料が無料であると聞いて、その後ハイデルベルク大学に移り政治学を学びました。

N : 外国人でも授業料が無料なんですか?

H : そうですね、当時はそうでした。州によっても違いますが・・・。

N : 授業はもちろんドイツ語ですよね。どうでしたか?

H : やはり語学学校とはレベルが違い、最初はかなり戸惑いました。ドイツ語は興味があったのでわりとすぐに習得できたのですが、それでも最初はプリントの内容から読解に苦労する位で、講義の内容は複雑でノートをとるのは苦労しました。

N : ドイツ語は特に難しい言葉ですし、大学の授業となると日常会話と別物ですからね。

H : 日本人は特にヨーロッパ言語が苦手だと思います。同じ時期に始めたロシア人はすぐに習得できたりするのですが、言語体系が全く違いますから。

N : 大学にはどれ位行かれたのですか?

H : 日本にはない学位なんですが、学士と修士を合わせたような学位を取りました。私の場合6年程で卒業しました。ドイツの大学を出た外国人は一年間求職期間として(ビザの)猶予をもらえるのですが、2か月目位に日系のコンサルティング会社に就職が決まりました。

N : 就職活動はどのようにされたのですか?

H : ニュースダイジェスト(在住日本人向けのフリーペーパー)やウェブサイトで出ている求人を見て、応募しました。そんなに時間を掛けずにすぐに決まってしまったのであまり活動をしたというわけではないのですが・・・。

N : どういった仕事を探していたのですか?

H : とにかく、ビザをサポートしてくれる会社を探していたので、職種よりもその条件を重視しました。日系企業だとサポートしてくれるところが多いので、重点的にチェックしました。

N : 会社ではどのような仕事を?

H : コンサルティング会社のお客様向けに経済情報などを配信しているのですが、欧州のニュースや政治、経済指標などを集め、翻訳して配信する仕事を担当しておりました。

N : 仕事はどうでしたか?

H : 基本的にタイトルは翻訳家ということだったのですが、そこでジャーナリズムも学ぶことができて、とてもためになりました。また、今でも時々翻訳の仕事をするのですが、翻訳の基本的なことや、いかにきれいな日本語にするかということを学びました。ただ、同じ仕事をこの先10年やって自分の成長が見込めるかと考えた時に、転職を考えるようになりました。

N : 転職活動はどのようにされましたか?

H : この時は自分で動くよりも、日系企業に強いエージェントに登録してサポートしていただきました。経理や財務の業務に興味があったので、その希望を伝えて希望に沿う仕事を紹介していただきました。

N : 海外就職でエージェントを使ったりですとか、「日系に強い」エージェントを探したり、ということがなかなか知らないと難しい所ですよね。

H : そうですね。その会社はフランクフルトにオフィスがあって、周りの日本人もよく利用していました。

それで、日本企業の現地法人に採用していただき、代表のサポートやアドミニストレーション業務と、経理を担当させていただきました。

N : 経理という業種はわりと経験を重視されると思っていましたが。

H : そうなんですよね、なぜ未経験の私が採用されたのか不思議なのですが・・・。 入社してからドイツの基本会計ソフトの使い方なんかを一から教えていただきました。それで、自分でももっと学びたいと思い、代表に掛け合い、商工会議所でやっている簿記・税法のコースを会社の負担で受講させていただくことになりました。

N : 簿記は日本の簿記ではなく、ドイツの簿記ですか?

H : ドイツの簿記ですが、複式簿記を採用しているので考え方は日本の簿記と同じです。そこで初級から最後まで2年程で修了しました。 

N : 簿記を全くやっていない状態から2年ほどで終了するのは結構大変だと思いますが、すごいですね。

そこではどの位勤務されましたか?

H : 3年と4か月勤めました。ただ、会社の規模が小さく、私が入社した時に設立された所で、経理の経験を積むには内容とボリュームにやや乏しいということがあり、もう少し規模の大きな所で経験を積みたいと思うようになり、再び転職活動を始めました。

N : その時はどのように転職活動をしたのでしょうか?

H : 前回と全く、同じエージェントの同じ担当者の方にお願いしました。その時は平行してイギリスにあるエージェントさんにもお願いしました。ドイツにはオフィスがないのですが、イギリスから電話やメールを下さってすごく細やかなサポートをしていただきました。結局はドイツのエージェントが紹介してくれた所に決まったのですが。

N : そのイギリスの会社は評判いいですよね。今の会社はどのような会社ですか?

H : 日系の化学系メーカーの関連会社です。まだまだ規模は小さいのですが、今後伸びていくと思われる分野です。業務内容は、今後は管理会計もできたらいいなと思っていますが、今は経理ですね。日本人からの駐在員である副社長の言語的なサポートも行っています。

N : 入社されたのは去年の⒑月ということですが、今の所どうですか?

H : 業務内容が思っていたのと少し違うということと、わかってはいたことなのですが、少し通勤時間がかかるので、今週に2日程大学に通っているのですがその時間のやりくりがちょっと大変ですね。

N : 大学では何を学んでいるのですか?

H : Master of Buisinessの修士のコースですが、あまり授業に出られない状態です。もったいないのですが、出席日数は問われないのでテーマに沿って本やインターネットで勉強して試験だけ受けています。授業に出られるように、会社には時短勤務制度の申請をしているのですが、それが受理されなかったらまた転職をしなければならないかもしれません。

N : もう1つ仰っていた、業務内容が少し違うというのは?

H : そうですね、上司のキャラクターにもよるのですが今の人は自分で何でもやってしまいたい人なのであまり仕事を任せてくれないこともあり、思ったような仕事ができないということもあります。

N : それはちょっと辛いですね。運というか入社するまではわからない部分でもありますね。

ところでなぜフランクフルトなのですか?

H : 最初に決まった会社がフランクフルトだったということと、友人もいますので。ただ、一度ドイツを出たいと思って、他国での仕事のオファーを受けたこともあるのですが、結局辞退してしまいました。

N : なぜドイツを出ようと思ったのですか?

H : ドイツは生活がしやすいかといったら、意外とそうでもないです。サービスや医者の質、インフラなどは良くないですし、天気は悪いですし。あとドイツ人は人が難しいです。

N : どういう所が難しいですか?

H : ノリが悪いというか、友達になりにくいです。ただ、一度なってしまえば大事にしてくれますし、正義感がある人が多いですね。一度ドイツを出たらありがたみに気が付くかもしれません。

N : 逆にドイツの良い所はどのようなことでしょうか?

H : あんまり思いつかないです(笑)。ただ、仕事とプライベートでの区別はしっかりしてますし、休暇はしっかりとれます。

N : 働くうえでのメリットはありそうですね。

H : それは沢山ありますね。休みは法定で有給休暇が20日あるのですが、今の勤務先は30日間有給があります。後、お給料は税金が高いので手取りはそうでもないですが水準は高いと思います。税金を払っている分、年金や医療などが充実していてあまり心配がないです。

N : 今後もフランクフルトでキャリアを積んでいきたいと思っていますか?

H : そうですね、ドイツ国内でいいオファーがあれば動いてもいいと思う反面、やはり友人や生活基盤のネットワークがここにありますから・・・。

N : 日本に帰ろうとは思わないですか?

H : 全く思いません。これは私の勝手なイメージかもしれませんが、日本社会は独身女性に厳しいように思います。就職がしにくかったり、そういったことを言われるのかな、とか。ずっと海外にいて、ドイツも12年ぐらいになるので今日本に帰ってどうやって仕事を探したりどうやって生活していくのか、全く想像つかないですね。

N : 日本の就職事情も大分かわってきていると言いますし、Hさんのようなキャリアと語学力があれば就職はそんなに心配はいらない気もしますが、ヨーロッパとは考え方は全く違いますよね。

ところでフランクフルトは金融の街と言われていますから、経理や財務ポジションの需要は多そうですね。

H : そうですね、経理を始めてからお声が罹る事が増えましたね。アドミニストレーションの仕事をするよりは経理が出来て、ドイツ語・英語・日本語が使えるとなると需要が多いようです。そういう意味では前職には非常に感謝しています。

N : 今ビザはどうされていますか?

H : 永住ビザを取りました。勤務している人は5年程税金を払ってからというのがあるのですが、私の場合は大学にも行っていたのでその分が加味され、3年程の勤務で条件をクリアでき、取得できました。

N : なるほど。そのビザがあるからこそ、転職も自由にできるということですね。ちなみにドイツでは数年で転職することは一般的なのでしょうか?

H : そうですね、3年位で転職する人がすごく多いです。特に金融系などの人は、よりよい条件があれば移っていく人が多いですね。まだまだ仕事は沢山ありますし、外国人も多いですので比較的仕事を見つけやすい社会だと思います。

N : 最後に、海外で働いてみたい人にアドバイスがあれば。

H : 「案ずるより産むがやすし」ですね。そんなに心配しなくてもどうにかなりますし、フットワークが軽い人は色々道を見つけられると思います。特にフランクフルトは日系企業も多いので、取っ掛かりとしていいかもしれません。

(終)

インタビュアーコメント

ドイツ語を一から始めてドイツの大学を出、就職してからも経理の勉強を続けて着実にステップアップをしているHさん。とてもパワフルで常に前に進もうとするエネルギーを持っています。インタビューを行った6月にはMaster of Businessの勉強をしていたHさんですが、現在は会計士資格取得に向けたコースに変更し勉強を続けながらより理想に近い職を得ることを目指し転職活動をされています。職を得てからも勉強を続ける姿勢、主体性は海外でのキャリアアップにはとても大事なこと、見習いたいですね。

Date of Interview : 2 June, 2016

Interviewed by : Natsu Nakaishi ( Orange Career )

 

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この記事の著者

Natsu NakaishiOrange Career 代表

大学卒業後日本で就職し、2004年にベルギー事務所へ赴任。ベルギー国内でのキャリアアップを果たし、イタリア事業所の部署スタートアップに抜擢される。並行して海外キャリア12年の経験を活かし、海外で働きたい女性のための情報サイト Orange Careerを立ち上げる。
英語圏の滞在経験ゼロから英検1級‣TOEIC950点取得、フランス語DELF B1他、オランダ語・イタリア語習得のマルチリンガル。

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