Interview 3  南仏でレストラン経営

海外で働く日本人女性のインタビュー企画第3弾は、南仏で日本食レストランを経営、女将さんとして働く有森さんにお話しを伺いました。

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有森歩(ありもり あゆみ)さん PROFILE

料理専門学校卒業後、2001学生ビザで渡仏。半年間語学学校でフランス語を学び、パリの製菓学校に入学。ディプロム取得後ノルマンディー、南仏、アルザスなどフランス各地を回る。帰国後、パティシエとしてホテル、ケーキショップ勤務。その後ワーキングホリデービザで再び渡仏、パリレストラン勤務。その後2015年にフランスで会社を設立し、2016年1月イエールにて日本食レストランSachi(幸)を開店。プライベートでは着物を通して東北を支援する「パリ小町」に参加。

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Orange Career Natsu Nakaishi( 以下、N)  フランスに来たきっかけは何ですか?

有森歩さん(以下、有森)  中学時代にアメリカに短期でホームステイをした時からずっと、日本は狭いなと感じていました。料理専門学校のプログラムで在籍中に1か月フランスに留学したこともあり、卒業後学生ビザを取って渡仏しました。最初の半年、語学学校でフランス語を学び、製菓学校に一年間通いました。パリにある伝統的なフランス菓子を学べる所だったのですが、私は日本を出るまでフランス語をほとんど学んでいなかったので、授業について行くのは大変でした。

N: 半年の勉強でそれはかなりキツイですね。授業は仏語ネィティブスピードで?

有森: そうです。周りの生徒は8割フランス人、フランス語ネイティブのアフリカ人、それにアメリカ人という感じで。でも何とかディプロムを取りました。

N: 何故パティシエを目指したのですか?

有森: もともとお菓子を作るのは好きだったのですが、母がずっとカフェをやりたいという夢があって、一緒にやろうと言われてたこともあり、その影響です。母は仕事をリタイア後カフェをオープンさせました。一緒にやることはできませんでしたが、帰国した時はひたすらケーキを作って手伝っています。

N: 素敵ですね! フランスを目指したのは、パティシエという職業からですか?

有森: いえ、そういうわけではないのですが、最初にフランスに来た時に、楽だと思ったからです。フランスが好きというわけではないのですが(笑)、住みやすいんです。

N: それはどういう所が?

有森: 日本ではどうしても常に働けらなければならないというか、休むことが悪い事のようにとられることもあるので、働くのは好きなのですが精神的にプレッシャーというか。フランスでは一生懸命がんばっている人にはうまく手助けしてくれる一方で、少し休みたいと思って何もしていなくてもほっておいてくれます。

それと、日本では人間関係も難しいというか、言いたいことを言わない人が多いので…私は意見をはっきり言ってしまう方なので、それが元でトラブルになることもあり、窮屈な思いがありました。

N: 人間関係は気を使いますよね。フランスではそれがない?

有森: ないですね。むしろハッキリ言わないといけないので、私でもまだ足りないくらいで(笑)。それにフランス人は反応が素直なので、嫌な時は嫌、というのがはっきりしていますから、楽です。

N: パリの学校を出て、フランス各地を周った後、一旦日本に帰ったのですね。

有森: はい。パティシエとして、地元のホテルと広島のケーキショップで7年働いていました。その後、ワーキングホリデーのビザ‐がとれるギリギリの歳になって、もう一度行こう、と。最初はアイルランドに興味があったんですけど、気が付いたらフランスのワーホリビザを取っていました(笑)。

N: 行動力がありますね。

有森: 頭で考えてしまうと、ネガティブに考えてしまうので、考える前に動くようにしています。とりあえずはやってみないとどう転ぶがわからないですし、そうしないと何もできなくなってしまう性格なので。

N: ワーホリ時代はパリへ?

有森: 最初にノルマンディーでファームステイなどをした後、パリのレストランでパティシエとして働きました。シェフが1か月バカンス中には厨房のシェフを任されたこともあります。その後、バカンスを取ったりして、帰国の少し前に日本食レストランで働くことになり、そこで今の主人に出会いました。

N: ご主人は料理人としてずっとフランスに?

有森: はい、オーナーの不在の時は店を任される立場でした。その後主人は店を移ったのですが、しばらくしてそこで店を買ってほしいと言われて。悩んだのですが、私も主人もパリがあまり好きではないんです(笑)。 それにパリは日本人が沢山いるので、夜はほとんどお客さんは日本人で、これではフランスにいるのにあまり意味がないと思っていました。

そんな時に、友人がこのイエールの物件が売りに出されていると教えてくれて、見に来たんです。イエールはファッションで有名な町で、島の方はヨットやダイビングの聖地なのですが、日本人にはあまり知られていなくて、私たちも知らなかったのですが・・

N:  来てみて、気に入ったと。

有森: 隣で主人が「買います」って言ってしまって、あ、買うんだ、と(笑)。

N:  決断が早いですね!

有森: 本来はすごく考える人なんですけど、余程気に入ったんでしょうね。私もそれならいいか、ということでパリでお店を買うお話はお断りして、それからは弁護士を雇って話をすすめました。まず、会社を設立してからでないと買えないので、会社を設立して。フランスは大抵お店は買えず、営業権しか買えないのです。なので営業権を買って、大家さんと契約して家賃を払っています。

N: ということはご自分の店なのに改装などはできない?

有森: いえ、大家さんとの合意により、内装は大抵変えられるんですけど、外の壁は国のもので、南仏は壁の色も決まっているので勝手に塗ったり、壁をぶち抜いいたりはできないんです。

N: 手続きは主に弁護士さんにやってもらったということですが、専門知識がいることだから専門家でないと厳しいですよね。

有森: それに、結局弁護士さんの方が早いのですから。といっても結構待たされました。5月に物件を決めて、会社ができたのが9月ですから・・・

N: 結構かかるものですね!

有森: いえ、これでもかなり早い方なんですよ。それで9月に会社設立して、私は日本にいる会社代表として商用ビザとしてビザを取り直し、2週間ほどで下りました。

N:  ビザはわりとあっさりととれたんですね。

有森: そうですね、会社も店もあったのでかなり早かったです。かかる人は1年ぐらいかかるらしいですけど。その後開店準備をして、今年の1月に店Sachi(幸)をオープンしました。

N: 新年と共に新たなスタートですね。それにしても、会社を設立したり、ビザを取り直したりと、すごく大変ですね。

有森: 大変と言えばそうですが、面白いですよ。知らないことも沢山あって、色々経験できますし。

N: イエールには日本人があまりいないですよね。

有森: そうですね、ほとんどいません。フランス人は引退して引っ越して来たような、ご年配のリッチな人が多いです。思ったよりも日本好きな人が多くて、パリのそういった人にくらべて貪欲ですね。やはりパリと違って日本食や日本と触れる機会が少ない土地なので、そういう方が来てくださったり色々と聞いてくれるのは嬉しいです。

一方で日本食=お寿司だと思っている方もまだまだ多いので、和食はそれだけではないということを店で食べて知ってもらえると嬉しいですね。

N:  そうですよね、日本食が世界的ブームといっても、お寿司はその一つでしかないわけですし。海外だとよく、日本人からするととんでもない味のお寿司を出している店も多く、現地の方にはそれが日本食と認識されたりしてますしね。

有森: 悔しいですね。うちもお寿司は出しているのですが、他にも丼ものなどなるべくいろんなメニューを出してます。フランス人は知らないものは食べない傾向があるのですが、ここの人たちは知らないけど食べてみよう、というという人が多く、やりがいがあります。

有森歩さんレストラン幸

写真上: お客様に折り紙をプレゼントすることも。日本酒も好評だそうです。

N: 食材はどうされていいますか?

有森: 現地で仕入れられるものは現地で仕入れています。こちらのお肉や野菜は美味しいですし、コストの面でも、値段を抑えることで気軽に来てもらえたらいいなと思っています。

N: 確かに、こちらのメニューのお値段は良心的だなと思いましたよ。日本食って仕入れの関係でどうしても高くなるものだと思ってましたが・・・

有森: もちろんコストがかかるので日本と同じ値段とうわけにはいきませんけど、和食というブランドとして高いお金をとるのではなく、なるべく気軽なお値段で何度も足を運んでもらえた方が嬉しいです。

N:  会社を経営されていて苦労されていることはなんですか?

有森: 日本人で商用ビザをとって商売している人がここにはいないので、市役所にしても諸手続きにしても知っている人がいないので相談できないので大変ですね。法律もしょっちゅう変わって窓口の人などがついていけず、時間がかかりますし、会計も一年に一度ではなく毎月のことなので、それは会計士に頼んでいます。

N:  最後に、海外に出たいと思っている方にアドバイスなどはありますか?

有森: とりあえず出てきたらいいと思います。日本で考えていても、来てみなければわからないことが多いですし、意外となんとかなるものだし、もしなんとかならなければ日本に帰ればいいわけですから。旅行でもなんでも、とりあえず出てみて、一歩踏み出してみるのが大事なのではと思います。

(終)

インタビュアーコメント:

まだフランス語が不自由な時から現地のパティシエの専門学校に飛びこんで、見事修了した有森さん。その後思い立ってワーキングホリデーで再渡仏、見知らぬ街で旦那様と一緒にレストランを開店したというその行動力と実行力はお見事!「考えるより前に行動を」という言葉には重みがありました。

日本人居住者が少ないイエールという街で、現地の人達に本当の日本食を伝えたい、というその思いは現地の人のファンを増やしているようです。将来の展望や夢もある有森さん、これからもやりたいことを実現していって欲しいですね。

Date of Interview : 13 March, 2016

Interview by : Natsu NAKAISHI ( Orange Career )

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この記事の著者

Natsu NakaishiOrange Career 代表

大学卒業後日本で就職し、2004年にベルギー事務所へ赴任。ベルギー国内でのキャリアアップを果たし、イタリア事業所の部署スタートアップに抜擢される。並行して海外キャリア12年の経験を活かし、海外で働きたい女性のための情報サイト Orange Careerを立ち上げる。
英語圏の滞在経験ゼロから英検1級‣TOEIC950点取得、フランス語DELF B1他、オランダ語・イタリア語習得のマルチリンガル。

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