Interview 5 ドイツでライフコーチとして独立

今回は、北ドイツのハンブルクで、ライフコーチとして独立して自分のビジネスをされている、ホイスラー・愛さんにお話を伺いました。

 

Haeussler Megumi(ホイスラー・めぐみ)さん PROFILE

短大卒業後、証券会社勤務。その後イギリスへ語学留学のため渡英。ロンドンの専門学校で秘書・国際ビジネスなどと学び、帰国後外資系証券会社勤務。2008年、家族でドイツに移住。ドイツで日系企業の営業アシスタント業務を3年半ほど経験した後、2015年よりライフコーチとして独立。海外で独立して仕事をしたい女性をターゲットに、コーチングを行っている。ハンブルク在住、2児の母。

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Orange Career Nakaishi(以下、N)  まず、これまでのキャリアヒストリーを教えてください。

ホイスラー愛さん(以下、愛) 日本で短期大学卒業後、証券会社に就職し、個人のお客様を相手に店頭販売業務をしていました。その後、イギリスに1年3か月程、語学留学と専門学校に留学しました。専門学校では秘書、国際ビジネスなどを学びました。

N  イギリス留学を決めたきっかけは?

愛 : 短大での専攻が英文科で、もともと英語にはかなり興味がありましたが、証券会社では英語を使う機会がなくて中途半端になってしまっていました。仕事は楽しかったのですが、自分はやっぱり英語を使いたかったんだという思いがあって、若かったこともありもう一度挑戦してみようと思いました。

N : 語学学校を終えてから日本に帰るのではなく、イギリスで専門学校に通おうと思ったのはどうしてですか?

愛 : 短大卒業後のキャリアというのは専門職というより一般職につくことが多いのですが、何か自分でも専門的なスキルを学びたいという思いがありました。それでイギリスで秘書やビジネスなどの専門分野を学んで、その先に活かせないかなと思いました。

 

N  専門学校はどうでしたか?

愛 : 最初の3か月は秘書だけの専門学校に通って、実務的なことやタイピングを教わりました。その後通ったビジネスの専門学校では様々なコースが合って、世界中からいろんな人が学びにきていたんですね。そこで若くして色々と考えている人とか、今まで会うこともなかったような国の人と出会えて刺激を受けたことはすごく良い経験になりました。

N  貴重な体験ですね。その後日本に帰られたんですよね。帰国後に就職活動を?

愛 : 当初は、イギリスで就職できないかと考えたんですが、ビザがないということで面接に呼んでいただけても先に進めなかったりと現実は厳しく、このままでは時間だけが過ぎてしまうなと思いました。そこで、イギリスにいる間に、日本にある外資系企業に履歴書を送り、面接の約束をいくつかとりつけた状態で帰国しました。

N : それで、帰国されて面接したところに決まったという事ですね。就職はどちらに?

愛 : 最初は米国系の証券会社でした。海外の決済業務や、お金や物の取引を日本と海外の拠点とやりとりをするような業務でした。

N : 日本での証券会社でのご経験と、イギリスで学んだ語学力をうまく活かせたポジションですね。

愛 : そうですね。その会社には2年位いて、その後仕事の幅を広げたいということ、お給料のステップアップを目指しメリルリンチに転職しました。そこではミドルオフィスといって、フロントとバックオフィスを繋ぐ業務や、バックオフィスの業務などを担当しました。

その間に長男が生まれ、産休を挟んで1年ほど復帰したのですが、「親子カフェ」をやりたいと思い、その準備のために退職しました。「親子カフェ」という形態は今は結構あると思うのですが、その当時はまだなくて、自分が母親になって自分の時間がなくてちょっとイライラしてしまったりすることもあったので、世の中のお母さんたちが子供を遊ばせながら自分も気楽にお茶を飲んだりする場所があったらな、と思っていました。

N : 日本のお母さんたちは仕事と家の事でかなり忙しいですからね。

愛: それで会社をやめてレストランビジネスの学校に行って立ち上げる準備をしていたのですが、ふとこれをやって忙しくなることで、自分の家族といる時間がなくなってしまわないか、自分と家族の幸せはどうなるのか、と怖くなり主人と話し合い、結局辞めようという結論になりました。

それで、当時長男が3歳位だったのですが、幼稚園に通わせながらしばらく専業主婦をしていたのですが、そのころ主人の会社(イギリス)から、ヨーロッパのポジションに空きがでて、在宅でもいいからどうかというお話をいただきました。

N  ご主人はドイツの方ですよね。

愛 : そうです、ずっと日本で仕事をしていましたが、そんな話はもうないだろうということで、私も仕事をしていませんでしたし、主人の故郷であるドイツのハンブルクに家族で移住することになりました。それが2008年のことで、主人は普段在宅勤務で、たまに出張があるという生活です。

 

N : ドイツでも会社勤めをされたのですよね。

愛: はい。ドイツに来て最初はドイツ語を習ったりしてしばらく家にいたのですが、2012年から日系メーカーの欧州本部でのお話をいただいて入社しました。

N : それはどうやって見つけたのですか?

愛 : 在ドイツ商工会議所に履歴書を登録しておいたところ、先方からコンタクトをいただき採用していただきました。営業アシスタントでしたが、内容は営業企画のアシスタントですね。営業の数字とか、営業戦略とかそいうい業務内容でした。

N  日本に比べたらフレキシブルだとは思うのですが、お子さんが二人いてご主人が出張の時などは結構苦労されたのではないですか?

愛 : 幸い近くに義理の母が住んでいてかなりサポートしてもらいました。当時下の子供が保育園だったのですが、熱が出てしまったときなどに預かってもらったりしました。

ただ、日系の会社で周りがほとんど日本から来ている駐在員の方でしたので、感覚の違いというか・・・。皆さんすごく良い方だったのですが、日本から駐在で来ている方は「日本のスタイル」を守っていらっしゃいますので、周りの空気を察して帰れないようなこともありましたね。子供がいるからといって忙しい時に自分だけ帰るわけにもいかず、でも子供は待っている・・・という葛藤はありました(笑)

N : よくわかります(笑)。 現地人からすると残業する人は「時間内に終えられない仕事ができない人」と思われたりしますが、日本から来ている駐在員の方々はそういう風には考えませんからね。

愛 : 社内会議のためのプレ会議があったり、とか独特ですよね。日本で働いていたときは外資系だったので全く違って、ドイツなのに逆にとても日本的でした。

N : 会社にはドイツ人の同僚の方もいたと思いますが、ドイツ人と働くのはどういう感じでしたか?

愛 : はっきりものを言ったり、合理的に考えるような所が最初は戸惑ったのですが、慣れてしまえばやりやすかったです。あと人によるのでしょうが、結構気遣ってくれるか方が多かったですね。私が日本人の駐在の方とドイツ人の間に入ってしまう立場をドイツ人の方がわかってくれて、「大変だよね」と気遣ってくれたりしました。ただやはり日本人駐在員とドイツ人の両方の愚痴が聞こえてきてしまうので、気を使いました。

N : その辺はどのようにうまく対処していましたか。

愛 : そうですね、八方美人ではないですけど、愚痴を言っている人にはその人なりのこうしたいという思いや理由があるので、うまく共感を表してすっきりしてもらい、例えばそこで日本人駐在員の愚痴であったりした場合は、話を聞きつつ、「こちらにはこういう思いがあった」ということをうまく伝えるようにしていました。それで両方がすっきりしてもらえるよう意識していました。

N : その会社での勤務で得たものは何ですか。

愛 : ドイツ人の立場、日本人の立場を客観的に見る機会を得たのは貴重でしたね。それと、ビジネスでのドイツ語を学ぶことができました。コミュニケーションもそうだし、ここでの勤務中に人脈、知り合いは増えました。

N : ドイツ人と働くうえでネガティブな点は

愛 : 頑固な人が多いですね。笑顔もなく、ボソッとものを言われて「怒ってるのかな?」と思ったり、とっつきにくい人は多いです。ただ、そういう人ほど慣れてくると優しかったりしますね。あと、ドイツ人は出来ないものはできないとはっきりしています。サービス精神がなさそうな感じですが、でもいい加減さはないですね。

それと、職場のヒエラルキーが意外とあったりしますね。上の人は上の人、というような。ドイツ語では敬語と敬語でないので文法(主語)が違うのですが、ただ付き合いが長いとくだけた砕けた文法を使っていたりと誰に敬語を使って誰にカジュアルで、という判断は難しいですね。

 

N : その会社を辞めたのはどうしてですか?

愛 : この先の自分のキャリアを考えたときに、一生やりたい仕事ではなかったんですね。それで何か自分か好きで続けられることを考えた時に、コーチングを選びました。在職中にベルリンにあるコーチングのコースに通って資格を取り、その間に無料でモニターさんなどをとったりして活動を始めました。

N : ライフコーチということですが、具体的にはどのようなことを

愛 : 今ちょうどコンセプトを変えている途中なのですが、最初は慣れない海外生活や、国際結婚で悩みや不安を抱える女性を対象に、前向きな方向に向かわせるというコンセプトでコーチングをしていました。

ただ、元々やりたかったのは女性が自立して、フリーランスとかスモールビジネスを海外でやりたいと思っている方の支援です。去年末位からその方向でプログラムを組み直して仕組みを作って、もうすぐそれを前面に押し出した方向でやっていこうと思っています。今、そこそこ幸せだけれでも、これだけでは足りないという事とか、お母さんなどで仕事をバリバリやって家族も幸せで、っていうのはやはりきつい時もあると思うんですね。そういう時に自分の幸せと家族の幸せを両方を実現するために独立して仕事をするというお手伝いをしたいと思っています。

N : まさに今、私がコーチングしてもらいたいです(笑) それで去年独立されたのですね。

愛 : そうですね、秋ぐらいですね。助成金の関係もあって、一度失業状態になり、スモールビジネスとして事業登録したのは最近のことです。

N  ドイツで起業するのは難しいですか?

愛 : 業種にもよると思いますが、そんなに難しくはないと思います。フリーランスと、私のように自分の事業主として登録する方法があるのですが、フリーランスだと業種によっては保険なども安いですのでコストはあまりかからないです。事業登録の方は保険料などが結構高いので、コスト面でのハードルは高いですね。

N : それでも事業主という形態を選んだのはどうしてですか。

愛 : 業種によってフリーランス登録をできる・できないの区別がありまして、税務署に相談に行ったとき、私のようなコーチングビジネスだとフリーランス登録はできないと言われたんです。

事業登録自体はすんなりいったのですが、私の場合は助成金を申請したのでその書類や事業計画書などの提出が大変でしたね。助成金を必要としなければそんなに複雑ではないと思います。

N : 女性を対象としているのは、ご自身のご経験からですか?

愛 : そうですね、私自身が会社に勤めたり辞めたりとグラグラしてきたわけですが、主人は同じ仕事をずっと安定してやってきているので、専業主婦としておさまって安定する道もあったわけです。でもなぜ自分はグラグラとしていたのかっていうことを考えたときに、何かを自分でしたかったというのがあったんだな、と。

専業主婦として自分の幸せを見いだせる人は、その人の才能だと思うんです。でも私のように何かしたいと思っている人が、思うようにいかなかったり、子供もいるのに自分がしたい仕事を望むのは「わがままなんじゃないか」 と自分を責めてしまっていたりすることがあるんです。そこでその人の性格や強みを生かして、家庭も、やりたい仕事も達成することができれば幸せなんじゃないかと思い、その手助けがしたいと思っています。

N : 私も海外で自分が望む職業を得られない時期や、夫の転勤などで同じような葛藤があったのでよくわかりますし、同じような悩みを持つ人は沢山いると思います。そういう時に、より経験や知識があって相談にのってくれたりアドバイスをくれる存在があれば心強いです。

 

N : ドイツで暮らしていて良い所は?

愛 : 働いていても、休暇が多いく年間30日はとれますし、3週間連続で普通にとれるのでバランスはとれますよね。またハンブルクは自然が多いので、子供とサイクリングに行ったり自然に親しむライフスタイルが可能ですね。

それに時間がゆったりしているので、人混みや行列があるわけれもないですし、エコの意識が進んでいます。ドイツ人はルール、秩序が好きなので日本人としては安心することが多いですね。

N  逆にデメリットはありますか。

愛 : ドイツをひとくくりにはできないと思いますが、北の方だとやはりラテン系に比べればシャイな人が多いので、自分から行かないと心を開いてもらえない、というのはありますね。

あとはドイツ料理は野菜があまり豊富ではないので、何とか工夫するしかないですね。デュッセルドルフの日本食材店からデリバリーしていただけるので、助かっています。

娯楽は東京などに比べるとまだまだですが、でも慣れてしまえば大丈夫です。

 

N : これから海外に出てみたいと思っている人に何かアドバイスがあれば。

愛 : 現実的に行ってみないとわからない状況はあるので、日本で完璧に準備を整えていかなければ、と思う進まないと思います。人間は知恵があるので、現地で何があってもどうにでもできると思うので、まずは一歩踏み出して進んでみて欲しいと思います。

(終)

 

インタビュアーコメント:

社会に出て少し経験を積んでから留学をして、帰国後は元の業界でステップアップしていったり、ドイツに引っ越してからも職業経験を経て独立したりと、着実にキャリアと経験を積み上げてきた愛さん。建前の前向きさではなく、転職や人生の転機で考えたり悩んだり、様々な人と関わってきた人生経験に裏打ちされた人特有の前向きさが伝わって、ライフコーチという職業がピッタリという印象を受けました。女性の仕事と幸せを追求するサポートがしたいという思いは私共OrangeCareerに通じるものがあり、同じ志を持つ者としてとても心強く、刺激を受けました。これからも海外でがんばる女性たちに知恵と勇気を与えていって欲しいですね。

Date of Interview : 10 April 2016

Interviewed by : Natsu Nakaishi / Orange Career

この記事の著者

Natsu NakaishiOrange Career 代表

大学卒業後日本で就職し、2004年にベルギー事務所へ赴任。ベルギー国内でのキャリアアップを果たし、イタリア事業所の部署スタートアップに抜擢される。並行して海外キャリア12年の経験を活かし、海外で働きたい女性のための情報サイト Orange Careerを立ち上げる。
英語圏の滞在経験ゼロから英検1級‣TOEIC950点取得、フランス語DELF B1他、オランダ語・イタリア語習得のマルチリンガル。

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