Orange Career
海外で働く

Interview 7  ベルギーの日系企業でステップアップ

今回はベルギーの日系企業に長年勤め、社内で異動を経験しながらステップアップをしている西本祐子さんにお話を聞いてきました。

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西本祐子さん Profile

幼少から高校卒業までの数年間をアメリカで過ごし、日本の大学卒業後1年間ワーキングホリデーでオーストラリアへ。帰国後貿易会社に入社。2年程の後に英国人の夫と共にベルギーへ移住。2003年よりベルギーにある日系企業現地法人、AWEurope勤務。社内での異動・昇進を経て現在マーケティング業務に従事、一児の母。

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Orange Career Natsu(以下、N : 大学卒業後、すぐに就職せずオーストラリアにワーキングホリデーに行かれたのですよね。帰国後どうされましたか。

西本祐子さん(以下、西本) : 英語を使う仕事、あまり日本企業らしくない所、を探して小さな貿易会社に入社しました。そこでは子供服を担当し、一年目から色々と仕事を任せてもらえる所でした。2年弱勤めたのですが、その間に英国人の夫と結婚し、夫がベルギーにある日系企業に就職を決めたので同行してベルギーに来ました。

N : ご夫婦ともベルギーという国に縁はなかったわけですが、なぜ英国ではなく、ベルギーの会社に決めたのですか?

西本 : 英国の会社からもオファーがあったのですが、夫はもともと日本に留学で来て、その後日本の市役所で働く機会もあり日本語がかなり上達していました。でも日本語は使わなければ忘れるので日系企業なら使う機会もあるし、そこは英語のネイティブというポジションでしたので色々と考えて決めました。

私はフランス語を大学の第二外国語でとっていたものの全く頭に入っていなかったし(笑)、英国に住めると思って、職探しもしようとしていたので計画とは違ったのですが・・・。

N : ベルギーに引っ越してきた当初は何をしていましたか?

西本 : 来た当初は一年程働かずに家にいました。(ベルギーの公用語である)フランス語もフラマン語も喋れなかったので、どうやって職探しをしていいかわからなかったのですが、たまたま夫が働いている会社で日本語と英語が話せる人、という条件で翻訳者のポジションで募集がありました。その時はとにかく外に出たいという思いがあったので受けることにし、採用され2003年始めに入社しました。

N : 日系の自動車関連の会社ですね。

西本 : はい。私はナビゲーションシステム事業部で、最初は評価チームで翻訳をしていましたが、1年半後位から日本の本社とコーディネート業務も任せてもらえるようになりました。その後プロジェクトマネージメントの仕事にかかわるようになり、評価チームの仕事とプロジェクトマネージメントを兼任していましたが最終的にはプロジェクトマネージメントに異動しました。

N : プロジェクトマネージメントは具体的にどんな仕事ですか?

西本 : 例えば自動車会社が2018年に発表する新車につけるナビゲーションシステムをうちでやるという仕事が取れた時に、その製品の仕様書をお客様を詰めていきます。地図をどう見せるとか、どういう機能をつけるとか、ボタンの色などデザインはどうするかというようなことをお客さんと話し合って決めていきます。そして納期に合わせて、日本の開発部に要求を出し、開発からできてきたものをベルギーの工場で組み立てるのですが、工場で問題があったときに出向いて調査をしたり、例えば何かの不具合で道の曲がり具合が仕様と違っている場合に自分で原因を調べるとか、専門の人に橋渡しをしたりなどして問題を解決に導いたり、プロジェクトの進行具合を管理して遅れている所を催促したりなどもして、最終的にお客様に納期内に納入できるようにフォローアップをしていました。

N : その仕事はどうでしたか?

西本 : すごく好きでした。計画を立てて、プロセスを作って、というようなことが今思えば自分に向いていたと思います。

その後、営業にうつりました。プロジェクトマネージメントの時に担当していた日系大手自動車メーカー向けの純正ナビの営業と、後付けナビの営業を両方担当しました。

N : ナビゲーションシステムといっても量販店で売っているような一般的なものに比べて、自動車メーカーを相手に営業をしている形態ですと、毎日営業に出かけるというよりは、一度の契約の比重がかなり大きいですよね。

西本 : そうですね、特に純正ナビの場合は、自動車メーカーの新車が2年後に出るというプロジェクトがある時にその車種につけるナビゲーションを向こう3年から5年くらい全てにつけてもらえるということなので、一件が大きいですね。同じ自動車メーカーでも車種によってナビのメーカーも変わるので、そこで仕事が取れても他の車種でとれるわけではないのですが、場合によっては複数車種につけてもらえることもありますので。

N : 日系の自動車メーカー担当ということですが、相手は日本人ですか?

西本 : いえ、国籍はバラバラですが全員ヨーロッパの方でした。

N : 今でも営業を?

西本 : いえ、現在はマーケティングに移りました。営業にいるときに長男を出産をし、産休から戻ったときに営業を続けるか、マーケティングに移るかという選択肢を提示され、マーケティングを選びました。

N : それは何故ですか?

西本 : 今までだいたい2⁻3年単位でポジションを移ってきたのですが、マーケティングをやったことがなかったのでやってみようかなと。

N : マーケティングではどんな仕事を?

西本 : 大きく分けて2つあり、まずイベントの準備と参加があります。

お客様の新車種のイベントが年に何度かあって、関係者、ディーラーの方を対象に新モデルの概要が発表されるのですが、その車種につける弊社のナビゲーションのデモやプレゼンを行います。そいういった大きなイベントが大きく3つあって、この他にフランクフルトやパリのモーターショー、プレスイベントがあり、準備・参加をしています。

もう一つは、業界のニュースやデータをインターネットや専門の会社に依頼してデータを集め、データ解析・トレンドの紹介を社内向けに発信し、今後の開発やビジネスの方向性に役立てるような業務を行っています。

N : 同じ社内でいくつか担当部署をまわっていますが、今まで経験した中でどこが一番良かったですか?

西本 : プロジェクトマネージメントですかね。ただ、当時は今よりプロジェクトが沢山あって忙しかったですし、私自身もまだ子供がいなかったので残業をしたり、トラブルがあったら工場に飛んでいったりと思いっきり仕事をできたのですが、今それをやらなければならないとなると、ストレスになるかもしれません。

現在はベルギーのタイム・クレジット制度(注1)を使って午前中だけの勤務にしています。大きなイベントや午後の会議などは参加できないので、そういった仕事からは下りて、淡々と仕事をしています。 仕事の達成感は以前に比べればないですが、子供がいるので今はその達成感が欲しいというよりは、淡々と仕事をこなすこの状態が合っていると思います。

夫の方が稼いでいるし出張も多いので、子供に何かがあった場合は私が子供をケアするという夫婦の合意があるので、今はそちらが優先事項ですね。

N : 現在お子さんは3歳ということですが、例えば10年後などにお子さんがもう少し大きくなった時にまた大きな仕事をしてみたいと思いますか。

西本 : どうでしょう・・・。今から10歳歳をとるということなので、その時バリバリ働きたいかといったらわからないですね。後数年は会社を辞めるつもりはありませんが、その先の事はわかりません。

N : 今の会社以外で、やりたいことはありますか?

西本 : そうですね、会社員を辞めたとしても専業主婦となって全く仕事をしないというのはないと思います。例えば、会社のお昼休みにパスタやベーグルのトラックが来るのですが、そういうことをやってもいいかな、とか 不動産を買って大家になったりとか、子育てをメインにしながら自分のビジネスもしたいという思いもあります。ただ、会社員としてカンパニーカーを支給してもらったりというベネフィットも大きいのでちょっとわからないですけど。

N : もう13年くらい今の会社にお勤めされているわけですが、会社を辞めたいと思ったことはないですか?

西本 : うーん・・・。入社した時は長く続けると思っていなかったし、そもそもベルギーに長くいる予定ではなかったので気が付いたら時間が経っていたという感じですね。仕事も小さな不満はあったかもしれませんが、それが大きく爆発したことはないです。夫も私も順調に昇進したり、やりがいのある仕事を任せてもらえるようになったりしたことが大きいですね。

それと、何年か前にすごく辛い経験をしてどうしていいかわからない状態になったことがあったのですが、そこから何とか立ち直ることが出来たのは仕事があったからだと思います。仕事が忙しかったことで悲しみに浸る間も考える間もなかったので。あの時外に出ることもなくずっと家にいたら、考えすぎておかしくなっていたかもしれません(笑)。

N : 仕事をしていたことで救われたということですね。

 

N : ベルギーで働くメリットは?

西本 : 例えばタイム・クレジットとか、有給休暇の取りやすさとか、子供を育てながら働く人にとって優しい制度が整っていると思います。あとはベルギーはカンパニーカーが普及(注2)していて、保険やタイヤやガソリンなどのベネフィットが大きくとても助かっています。

N : 逆にデメリットは?

西本 : ベルギー人というよりはフランス人なんですが、感情的すぎて、日本人の気性から見ると引いてしまうことがありますね(笑)。言い方がオーバーで、何でこんなに感情的なんだろうと。

あと、ベルギー人でいうと会社はワロン(フランス語圏)にあるのですがフラマン人(オランダ語圏のベルギー人)に対する対抗意識というか受け入れない感じがすごいですね。例えば、会社のホームページを刷新する際に言語の議論になって、結局フランス語・英語・ドイツ語を入れて、公用語のフラマン語を入れなかったり。フラマンの人がどうなのかわかりませんが、閉鎖的だなと思いました。

N : フラマン地区でもオープンな所もあれば、逆にアンチワロンの人が多い会社もありますね。

周りの同僚はほとんどフランス語圏の人なわけですが、ご自身のフランス語がまだ不自由だった時に、疎外感を感じるようなことはなかったですか?

西本 : それはなかったですね。英語で全く問題なかったです。英語がベルギー人と比べても誰よりできるという自負はあるので、皆もそれをわかっていて、「英語でわからないことがあったら祐子に聞け」という部分があったのでそれもあったかもしれません。

N : ベルギーに住んでいて良いと思うことは?

西本 : 最初にベルギーに来た時は現地の言葉がわからず、英語が喋れてもあまり意味がなくて苦痛に感じていたけど、長く住んでからわかったことなんですが、意外と英語だけでもなんとかなるので外国人も住みやすいと思います。それと比例して特にブリュッセルにはいろんな国の人がいて、アジア人であることで驚かれたり構えられたりすることがないですね。

ただ一方で、ベルギーに来た始めの頃に英語しか喋れない状態で車上荒らしに遭い、警察が助けてくれなかった時もありました。

N : それは・・・たまたまの悪徳警官だったかもしれませんが、酷いですね。

西本 : ただ、夫には日本の方が酷いと言われました(笑)。英語を喋れる人が少ないので困ったときに助けてもらえない、と・・・そうなのかもしれないと納得しました。

他にデメリットで言えば日本に比べて地下鉄が汚いとか。コンビニがないとか、その位ですかね。

 

N : 最後に、日本にいて、海外で働いてみたいと思う人にアドバイスがあればお願いします。

西本 : 海外に来る前にその国の言葉のベーシックなレベルは勉強しておいた方がいいですね。少しでも言葉がわかれば疎外感を感じるようなことも少ないと思います。

あとこれは人それぞれの考えだと思いますが、気軽に考えて何かあったら人に頼ればいい、面倒を見てもらおうと思っている甘い考えの人は改めた方がいいと思います。日本からの赴任者でもそういう人を何人か見てきましたが、出会う日本人が皆気が合うわけでもないですし、ある程度は自分で対処する心構えは大切だと思います。

(終)

 

(注1) タイム・クレジット制度…ベルギーで小さな子供を育てている一定規模偉業の事業所に勤める社員が、一定期間に時短で働くことができる国の制度。数年に渡り半日勤務、8割勤務などがフレキシブルに選べ、その間の雇用は保障される。

(注2)カンパニーカー制度…ベルギーでは一定以上の職務の社員に社用車を支給する割合が他のヨーロッパ諸国に比べても非常に高く、通常社用車には各種保険、冬タイヤの交換やガソリンカードなども含まれる。企業側には給与に対する高額な税金を節約するメリットがある。

 

インタビュアーコメント:

海外の日系企業で現地採用として働くことは海外で働きたい日本人にとって大きな選択肢の一つですが、現地採用のポジションは秘書やアシスタント的な業務がほとんどです。しかし西本さんのように英語という武器を活かして翻訳という専門職や、さらには社内で経験を積みキャリアアップしていくことも充分な可能性があり、サポート業務以上の仕事をしたいという人にもチャンスはあります。要は本人次第、現地採用だからと自分にリミットをつけるのではなく、西本さんのようにやりたい仕事を得る努力を続けることが、海外であろうと日本であろうと自分の描くキャリアを得る唯一の方法ではないでしょうか。

 

Date of Interview : 23 April 2016

Interviewed by : Natsu ( Orange Career )

ABOUT ME
Natsu
大学卒業後日本で就職し、2004年にベルギー事務所へ赴任。ベルギー国内でのキャリアアップを果たし、イタリア事業所の部署スタートアップに抜擢される。並行して海外キャリア12年の経験を活かし、海外で働きたい女性のための情報サイト Orange Careerを立ち上げる。 英語圏の滞在経験ゼロから英検1級‣TOEIC950点取得、フランス語DELF B1他、オランダ語・イタリア語習得のマルチリンガル。