Interview 9  パリのネイルサロンで活躍中

小学校の教員から全く違うネイリストに転職し自分のサロンを開業、現在はパリのネイルサロンで働く久賀田有紀さんにインタビューしました。

_______________________

久賀田有紀さん Profile

大学で教員免許を取得、幼稚園、小学校で教員として勤務。教員をしながらネイリストの学校NAILS GOOWテクニカルカレッジに通い資格を取得、都内大手ネイルサロンDASHING DIVAに転職。2013年、独立し東銀座にネイルサロンmani nail オープン。20157月より渡仏し、現在パリでネイリストとして活躍中。
_______________________

 

オレンジキャリア 中石(以下、N) : 学校を卒業してからのパーソナルヒストリーを教えてください。

久賀田有紀さん (以下、久賀田): 大学は全く畑違いの教育学部でした。教員免許をとって、卒業後教員として幼稚園、小学校で働いておりましたが、ある時通っていたエステの方が独立して自分のサロンを持って働いているのを見て、漠然といいなぁと思いました。

元々ピアノをやってたこともあって自分ではネイルはあまりやっていなかったのですが、絵を描くのが好きだったこともあって、ネイルアートに興味を持ち、働きながらネイルの学校に通いました。ネイリストの資格を取ってから、教職を辞め、ネイルサロンに就職しました。

N : 小学校の先生とは全く違う業種ですね。

久賀田 : そうですね、サービス業なので土日が休みでなかったりで周りからの反対はあったのですが、やりたいという気持ちの方が大きくて優先しました。

N : 小学校の先生も資格があってずっと働ける職業だと思いますが、手に職をつけたかったということなのでしょうか?

久賀田 : どちらかというと、手に職が優先というよりは、月~金で働くより自分で時間を決められるということが魅力でした。この先子供を育てることがあっても、仕事の時間とプライベートの時間を自分うまくコントロールできたらというのがありました。でもやっていくうちに、ネイルの魅力を知ってますますのめりこんでしまいました。

N : 資格をとったのはいつごろですか?

久賀田 : 8年位前ですね。その後サロンに就職して、2013年に独立してサロンをオープンしたのですが、独立する直前に、1か月ほどNYで研修に行きました。それで海外でのネイル事情やネイル技術を知った時に、日本人のネイル技術をもっと広めたいというのと、自分も一度海外でネイリストとしてやってみたいというのを漠然と感じました。

N : NYのネイル事情は日本とは違うのでしょうか?

久賀田 : アメリカはネイルの大手ブランドが沢山あって、需要がすごく大きいです。日本だと、ネイルサロンはちょっと特別なオシャレなプラスアルファの感覚ですが、アメリカはネイルをケアと捉えて髪の毛を切るのと同じような感覚で、ネイルサロンも沢山あります。その分もちろん低価格ですし、ネイリストも沢山いるので、ネイリストの技術面では相対的に低めなんですね。

日常的なものなので、日本のように時間を掛けて丁寧なケアをするより、30分で終わるようなスピードケアなので、もっと日本のような丁寧なサービスを広めたいなと思いました。

 

N : 自分のサロンをオープンするのは大変だったのではないですか?

久賀田 : そうですね、飲食店や美容院に比べれば資金の面でそんなに掛からないですが、今までのように決まったお給料が入ってくるわけではないので、不安はありました。でもスタートした時が繁忙期だったりで、意外に順調に進んでいました。

それで2年程東京で順調にやってきたので、逆に海外に行くという踏ん切りがなかなかつかなかったです。今はお店を一旦お休みしている状態ですが、帰ったらお客様が戻ってきてくれるという保証もないですし。

N : その踏ん切りをつけたきっかけは?

久賀田 : 今、ワーキングホリデービザで来ているのですが、年齢的に最後のチャンスだったというのが大きいです。もちろんフリーランスビザなど他の方法で海外に出る方法はあるのですが、(WHは)一番ビザがとりやすかったですし、これを逃すをもう長期で海外に来るようなことができないかもしれないと思いました。

N : パリにいらしたのは?

久賀田 : 去年の7月です。

N : フランスを選んだ理由は。

久賀田 : 実は消去法で、本当はアメリカが良かったのですがビザが難しいですし、ロンドンはビザが抽選で、抽選に漏れてしまったんです。フランス語の心配はあったのですが、行ったこともあるしと思いフランスにしました。

N : フランス語がわからないということですが、生活で苦労されることはないですか?

久賀田 : パリは意外と英語で接してくれる人が多く、ほぼ英語でなんとかなっています。

N : フランス語を勉強しようとは思わなかったですか?

久賀田 : 本当はしなければならないんですが(笑)、ただ限られた時間の中で、語学学校などでフランス語の勉強に時間を費やすよりも、サロンでの仕事で経験値を積むこと、技術や感性を磨くことを優先しました。

N : パリに来た時から今のサロンで働いていらっしゃるのですか?

久賀田 : いえ、最初はアジア系のネイルサロンにつとめていました。それと自分でイベントや撮影などの仕事をして、サロンワーク半分、自分の仕事半分という風にやっていました。

N : イベントなどの仕事はどのようにして見つけましたか?

久賀田 : 東京時代の知り合いの方々が紹介してくれたりして、そういったつながりですね。

N : サロンはアジア系ということですが、お客さんは日本人やアジア人の方が多いのでしょうか?

久賀田 : いえ、お客様はほとんどローカルのフランス人で、たまに日本人の方もいらっしゃる位でした。

N : フランス人の方は日本人のお客さんと要求が違ったりしますか。

久賀田 : アメリカと同じような感覚なんですが、やはり共働きが基本の社会なので、いらっしゃる方も皆忙しい合間を縫って来店される方がほとんどですので、時間には厳しいですね。東京の自分のサロンではお客様にお茶をお出しして、お喋りを楽しみながらゆっくりと時間をつかう形だったのですが、こちらではスピードを求められることが多いです。

それからご自身で色やネイルを指定してくるなど、どんな色が似合うとかのカウンセリングをあまり必要としない方が多いですね。アートもあまりしない一色塗りが多く、ネイリストに求めるのは指定した色を早くキレイに塗る事という事が多いです。

N : なるほど、カウンセリングというよりは塗る技術を求められると。

久賀田 : そうですね。アートをする場合も派手なデザインはあまり求められないです。なぜかというと、フランスではファッションの中でネイルは脇役なので、どんな服を着ていても合うネイルが好まれ、派手なアートは服に合わないと考えているようです。

 

N : 去年パリで起きたテロの影響はありましたか?

久賀田 : 実は、親友の結婚式のために一時帰国している時にあのテロが起きたんです。一週間ほどでパリに戻る予定だったのですが、空港とかごたごたしていましたので、それでしばらくパリに戻るのはやめました。周りの反対もありましたし、パリへ戻るかどうか悩んだのですが、やはり日本で順調だったサロンを休んでまで踏ん切りをつけたパリ行きだったのに、このままではまだ不完全燃焼だという思いもありました。ちょうど4月の頭にパリで美容のエキスポがあって、そのコンテストに出られる機会を得て戻る事にし、また今のサロンで働くことも決まり、ビザ満了までいようと思いパリに戻りました。

これから何があるかわからないですが、自分で気を付けられることは気を付けてやっていこうかなと。どこにいても何があるかわからないですし、自分のやりたいことを諦めたくはなかったです。

N : 今のサロンはパリに戻ってから働いているということですが、どうやって見つけたのですか?

久賀田 : パリに住んでいる知り合いの方がここのオーナーと知り合いで紹介していただきました。オーナーがアメリカの方ですが、スタッフは私以外フランス人です。

N : 今の所はどうですか?

久賀田 : ELLEとかVOGUEとか有名な雑誌に載るようなサロンなので、お客様はまさかフランス語を話さない外国人のスタッフがいるとは思われていないので、びっくりされます(笑)。サロン自体はフランス語と英語のバイリンガルを謳ってい、スタッフは全員英語が喋れますのでスタッフコミュニケーションに問題はないのですが、フランス人のお客様とのコミュニケーションが難しく、今ちょっとずつ勉強しています。

今のサロンはジェルネイルはなくて、マニキュアと、マッサージやオイルなのどのケアをメインにしています。例えばフットバスの香りを、オレンジを選ぶとオレンジを丸ごと切って入れたり、バラはバラの花びらを入れたりと本格的にやっています。お値段もそれなりにとっているので、お客様も特別感をもっていらっしゃる方が多く、日本のサロンにはない点が多くとても勉強になります。

N : 日本にはあまりない形態ですか?

久賀田 : そうですね。サロンではお茶を飲めるスペースを広くとっているのですが、昨日もお友達同士でいらしたお客様が、ケアを終えてから午後ずっとお茶を飲みながらくつろいでいらっしゃいました。日本ではあれだけ広くスペースをとってゆったりとやっている所はないと思います。ゆとりのあるスペースをとるとそれなりに資金もかかるので、採算がとれるのかとか、色々参考にさせてもらっています。

N : フランスで働いて得たものは。

久賀田 : フランスで働いている方皆さん仰いますが、やはり日本では人生の中で仕事の比重がすごく大きいですよね。私も自分のサロンで定休日を設けていたのですが、やればやるだけ効果があることもあって、どうしてもという場合に定休日に仕事を入れてしまったりしていました。

フランスで日曜にお店が全部休みでも周る世の中を見ていると、私も今度日本に帰っても、もう少しゆとりを持って仕事もプライベートも楽しみたいと思うようになりました。フランス人はバカンスも1か月とったりしますが、それでも何とかなるというということは残りの11か月でその分働いているわけですよね。

よく、フランス人は怠け者と言われますが、仕事の仕方の効率がすごくいいんですよね。いかに残業をせずに就業時間中に終わらせるかということが徹底されています。サロンでも、お客様との会話をゆっくりとしながらも、行動はすばやくしてるので、そういった仕事の仕方は頭が良いと思いますし、見習いたいです。

N : そうですね、ヨーロッパの人は残業ばかりしていると「時間通りに仕事を終えられない仕事ができない人」、と考えますからね。私もヨーロッパの日系の会社勤めで、就業時間30分過ぎたら残っているのは日本人だけ、ということがよくありました。皆が時間通り帰るのが普通の社会だから父親も夕食の買い物に行ったり子供を迎えに行ったりするのが普通にできますしね。

久賀田 : パリに来て、よく夕方や休日にお父さんと子供でいるのを見かけますが、日本ではあまり見かけないですよね。

N : そういう所は素晴らしいですよね。逆に嫌な面はありますか?

久賀田 : 個人的に嫌な思いをしたことはないのですが、パリに来た当初は街の汚さは気になりました。でも、そういったこととか、スーパーのレジが一つしか空いていなくてすごい行列になっていることとか、待つのが普通になってしまい気にならなくなりました。逆に日本のコンビニなんかで、私一人しか待っていないのでわざわざ奥から出てきてレジを開けてくれて「お待たせしました!」って言われると、(そんな、休んでていいよ・・)って思っちゃいます(笑)

あと治安の悪さとかお釣りをごまかされたりということもありますが、それも自己防衛なのかなと。お釣りは必ず確認するようになりましたし、生きる力が身につきました(笑)。

N : 日本に帰ったらどうされますか?

久賀田 : 東京でまた自分のサロンを再開したと思っています。

N : 最後に、海外に出たいと思いながら踏ん切りがつかない人へアドバイスがあればお願いします。

久賀田 : 私も日本を1年間離れるのが永遠の事のように感じていたのですが、今は毎日が新鮮です。確かに日本に比べて不便な事もありますが 自分の長い人生の中で海外で仕事をして過ごすという経験がすごく貴重だと思います。日本に帰ってからの後々の生活を心配することもあると思いますが、日本で生活するということは母国語が通じるし、何でもスムーズにいくので日本に帰ったらすぐに慣れるし何とかなると思います。私も、これだけ沢山の国があるなかでパリで出会えた人というのはやはりどこか共通点があるのか、一生大事にしたいと思える人にも出会えましたし、来てとてもよかったです。

(終)

 

 

インタビュアーコメント : ネイリストとして独立して自分のサロンを持ちながら、一念発起して海外での経験を積み上げている久賀田さん。期間が決まっているとはいえ、そこに迷いがなかったはずはありません。しかしニューヨークやパリで海外のネイル事情や日本と違ったお客さんの要求を目の当たりにし切磋琢磨した経験や技術はずっと日本の同じ場所にいては得難い事で、必ず日本に帰ってから生きてくるはずです。7月からまた東京でサロンを再開する予定という久賀田さん、この一年の成果を存分に発揮して活躍していって欲しいですね。

Date of Interview : 30 April 2016

Interviewed by : Natsu Nakaishi ( Orange Career )

この記事の著者

Natsu NakaishiOrange Career 代表

大学卒業後日本で就職し、2004年にベルギー事務所へ赴任。ベルギー国内でのキャリアアップを果たし、イタリア事業所の部署スタートアップに抜擢される。並行して海外キャリア12年の経験を活かし、海外で働きたい女性のための情報サイト Orange Careerを立ち上げる。
英語圏の滞在経験ゼロから英検1級‣TOEIC950点取得、フランス語DELF B1他、オランダ語・イタリア語習得のマルチリンガル。

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ページ上部へ戻る