Interview 10  ミラノで活躍する日本人美容師

今回はインタビュー企画史上初、男性が登場します! イタリア・ミラノで美容師として活躍する黒島洋平さんにインタビューしました。美容師さんで海外を目指す方、男性も女性もぜひ参考にしていただきたいです!

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黒島洋平さん Profile

高校卒業後、美容室に勤務しながら美容専門学校を通信カリキュラムで修了、美容師国家資格取得。日本で8年の経験を積み、2015年よりミラノのサロンOtto勤務、定休日にはフォトシューティングでスタイリングを担当。2016年夏にはニューヨークのサロンで1か月間研修予定。

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Orangecareer Nakaishi (以下、N) : 現在ミラノ中心部の日系ヘアサロンOttoにお勤めですが、ミラノに来たのはいつですか?

黒島洋平さん (以下、黒島) : 去年の夏位です。

N : その前は日本で美容師を?

黒島 : はい、日本では美容師学校を修了しないと国家試験が受けられません。僕は高卒で美容室で働きながら通信で美容師学校を卒業し、資格をとりました。

N : 働きながらの通信の学校だと大変ではないですか?

黒島 : そうですね、でもそれが一番現場慣れするので、技術者になった時にお客様がつきやすいです。例えば同じ年齢で資格を取っても、美容師学校を卒業したての人よりも、すでにお店のカリキュラムをこなしているわけで現場にも接客にも慣れますし。

N : もう高校生の時からそういうビジョンがあって決めたという?

黒島 : そうですね、僕は高2の時から美容室で働き始めました。

N : 美容師の資格取得後もずっとそのサロンで働いていましたか?

黒島 : そうですね、そのサロンに勤めながら空いている時間に他のサロンで勉強させていただいたり、個人で動いたりしていました。沢山のお客様からの希望もありやらせていただいていました。

N : 日本を出たきっかけは?

黒島 : 元々この仕事を始めた時に、日本で技術のベースを作ってから海外で働いて外国人に対しての技術を身に着けたいと思っていました。最初はニューヨークに行こうと思っていたのですが、僕の知識と人脈では日系のサロンになるんですね。日本人の多いNYですと、どうしても日本人のお客様の対応が主になってしまって、それではあまり意味がないと思いました。あと、ビザを取るのが時間もお金もかかりその時の自分では難しいなと思っていました。そんな時に、このミラノのこのお店がオープンするのでどうか、というお話をいただいて、話を聞くと日本人のお客様よりイタリア人、その他の国のお客様が多いと聞き、「ヨーロッパか、行こう」、と。

N : 決断が早いですね!

黒島 : 決断は早かったのですが、その後の準備には時間がかかりました。日本で育てて下さったお客様をおろそかにはできないので、それが落ち着いてからと思いました。

N : NYに行きたいという理由は?

黒島 : NYには「NYドライカット」という技術があるんですね。その講習に行って、衝撃を受けました。日本でも学べるのですが、やるならNYで学びたいと思いました。あとは、アメリカの文化が好きなのと、アーティストが集まり本物しか生き残れないと言われている環境で技術を身につけたいと思って。

N : なるほど。でもそういった意味ではミラノやパリも有名だと思うのですが。

黒島 : そうですね、ミラノは特にファッションが有名ですよね。なので今空いた時間にフォトシューティングをしていまして、自分のブックを作っています。

N : ブックというのは?

黒島 : 僕はこれからファッションのヘアスタイリングの仕事をしようと思っていまして、でもその仕事をするにはエージェントに所属するのが仕事を頂ける可能性が高いんです。エージェントに所属するために、自分がこういう仕事を、こういうスタイリングができます、と自分の仕事を証明する作品集みたいなものですね。知り合いのフォトグラファーがすごくいい人で、テストシューティングという形でやらせて頂いています。彼が、自分のブックの写真を増やしたいというモデルさんを手配してくれるので、とてもいい環境でやらせて頂いています。

N : モデルさんにもメリットがあってお互いに良いですね。でも、これを定休日にやっているわけですが休みなしで大変では。

黒島 : ミラノに来てからずっとこんな感じです。たまに自分がカットした写真も自分で撮ったりしていますし。僕はイタリアにずっと住むわけではないので、今いるうちにここでしかできないことをやりたいと思っています。ここはモデルさんの質もすごくいいですし、西洋人のモデルさん達のスタイリングをできる機会は日本ではあまりないですし。またこれを発信することで、日本から仕事を持ってこれたらと思っています。

N : ミラノに来て良かったことは?

黒島 : 生活が改善されましたね。コンビニがないですしお店が遅くまでやってませんので、自分でなんとかするしかないですね。仕事の面では対外国人の技術を身につけられたことが大きいです。それにミラノはいいものが身近にありますよね。建築だったり、ファッションとか、いいものに触れて感性を磨くという点で僕らの仕事では役にたってますね。

N : サロンのお客様はイタリアの方が多いですか?

黒島 : 日本人が3割位、あとは外国の方です。日本人以外ではイタリア人が一番多いですが、中国、韓国などアジア系の方も多いですね。

N : アジア系の方でも日本人と髪質は違いますか?

黒島 : 違いますね。あと、水質が全然違うので、パーマはかかりづらいし、落ちやすい。カラーもすぐ落ちてしまいますね。それから日本だと、何かに特化したサロン、例えば縮毛矯正に特化したサロンとか多いんですけど、ここだと幅広く何でもかんでも自分でやることになるので、幅は広がりますね。

N : ミラノで苦労していることは?

黒島 : やっぱり言葉です。

N : イタリア人のお客様とはイタリア語で?

黒島 : はい、イタリア語でやってます。周りのスタッフに助けられながらやっています。

N : 夏にNYに一か月研修に行くということですが。

黒島 : 仕事の先輩が毎年夏に行ってまして、行きたいという話をした所、今回行けることになりました。NYに5店舗位ある、現地のサロンです。ゆくゆくはNYでやりたいというのがあるので、その準備もありますね。まずはNYのめちゃくちゃ早い英語やスラングに慣れたいというのと、技術やプロダクトもそうですし、それとNYでもフォトシューティングをやりたいと思っています。いつもミラノで一緒にフォトシューティングをやっているフォトグラファーの方も一緒に行くのですが、NYのストリートにいる人をスタイリングして、NYならではのものをやりたいと。

N : 素敵ですね。それに先のことをよく考えていますよね。

黒島 : 自分のような人間でもやればできるというのを見せたいというのもあります。今、日本では美容師の数が減少傾向にあって、国家試験の合格者も10年間前の半数になっていて、それを変えたいと思っています。

N : なぜ減っているのでしょう?

黒島 : やはり先行するイメージが良くないのだと思います。「美容師は大変な仕事」というイメージが先にきてしまい、なりたいと思う人が減っているのでしょうね。でもまだ僕ら美容師がこの仕事の楽しさ、素晴らしさを伝えきれていないというのもあるかもしれません。

N : 海外と日本では美容師の学び方は違いますか。

黒島 : 違うと思います。海外だと専門学校を卒業した後にまた別の技術を学ぶスクールに入って勉強すると聞いたことがあります。日本ではサロンの中のカリキュラムで育てていくスタイルがほとんどだと思います。

N : それだと拘束時間は長いですよね。日本では営業時間が長い上営業時間の後に後輩の指導なんかをしていますよね。

黒島 : そうですね。それと、お客様に対する考え方の違いも大きいですね。

N : お客に対して、ものすごく気を使いますよね。美容師さんに限らずですが、ヨーロッパのぞんざいな客扱いに慣れていまうと、日本の接客はたまにびっくりします。

黒島 : 日本だと新規のお客様なんかに、横で片膝ついてお伺いしたりしますよ。

N : やってますね、ホストクラブみたい(笑)。その気の遣いよう、働いている方は大変ですよね。

黒島 : やはり離職率が高くて、10年後12割残っているか、というところです。

N : それはかなり高い離職率ですね。美容師さんって、会社員と違ってなりたいと思ってなる人がほとんどだと思うのですが、そうやってせっかくなったのに、もったいないですね。

黒島 : 仕事が終わってトレーニングというのは指導する方もされる方もキツイので、トレーニングサロンのような外で集中してトレーニングできるようなものを作って時間をお金で買うような教育の方法があればいいなと思っています。

僕は将来的には人を育てたい、この仕事の良さを広めていきたいというのがあります。傍からみたら華やかな仕事をしているように見えても、それは毎日毎日地道に技術を積み上げてきてやっとここまできたわけで、ここまで来たから面白いんですよね。それまでがきつくて大変で、練習ばっかりで辞めてしまう人が多い。でもきついことを乗り越えて技術が身についてやっと楽しいと思えることがあるんです。

この前美容師の求人サイトをやっている会社(www.seyfert.co.jp)の社長さんにお会いすることがあって、その会社はロスやイギリスにも支店があって海外からの求人も出しているんですね。そこで「イタリアってどう?」っていう話で、日本での技術が最初通用しなかったということを話したところ、今後日本にも西洋人とか外国人が増えてくるので、外国人の髪を扱えて英語を話せる美容師さんが増えたらいいという話になって。

例えば日本人の硬い髪質を柔らかく見せるという点で日本の美容技術は優れていますが、西洋人からしたら何がいいのかわからないわけですよ。求められるものが全く違うんですね。今後は日本にいても、西洋人が好む技術を求められていくことになると思うので、そういった技術なんかを教えるトレーニングセンターを作れたらなと。

N : 素晴らしいビジョンですね。目指すものが沢山ありますね。

黒島 : ミラノに来て、日本では会うことができなかった人と知り合えたり、経験ができて視野が広がりました。ミラノにいる限りはフォトシューティングをしてファッションの仕事をしてみたいというのと、ミラノの後はNYで働きたいということ、日本と海外を繋げて日本にいる美容師のための情報や技術を広めていけたらと。

N : 海外の大きな都市には日系の美容室が沢山あり、人を欲しがっているということですので、美容師さんにとって、海外で働くという道はあるわけですよね。

黒島 : そうですね。ただ行こうと思うかどうかですね。僕もミラノでやっているというと「すごい」とか言われるんですけど、「じゃあ来ればいいじゃないか」って思うんですよね。皆が思うほど特別なことではなくて、後は自分次第というか。

確かに、僕も今まで日本のサロンでそれなりに積み上げたものをゼロにしてっていうのは迷うものはありましたけど、でも行かないと絶対後悔すると思ったんですよね。それよりは行ってみて、後悔したらそれはそれで仕方がないと思えるし、失敗してもまた日本に戻ってがんばってやればいいわけで。一歩背中を押してあげたいですよね。

N : 本当にそうですよね。黒島さんには背中を押してくれる人はいましたか?

黒島 : 僕の師匠が、悩むなら行ってみたらいい、って言ってくれましたね。体感しないとわからないことはあるわけで、それを帰ったら教えてくれと。逆に僕がいない間の日本の現状は教えてやるからお互いに教えあおう、と。それで講習会とかやれたら、と。

N : いいご師匠ですね。

黒島 : 後はいかにどう伝えるかですよね。せっかくミラノにいるので、ここでやった仕事を残したいと。それが写真に残るファッションの仕事だと思っています。ファッションはやっぱり興味もあるし、楽しいですね。そうやって僕が楽しみながらやった仕事を他の人に伝えていきたいですね。

(終)

インタビュアーコメント: 行きたかったNYではなかったものの、ミラノというチャンスが来た時にすぐに決断するフットワークの良さと、ミラノにいるからこそできることを最大限生かして日々切磋琢磨している黒島さん。ご自分のこれからのキャリアのこと、美容師業界全体のこと、を踏まえて自分が何がしたいのかということをよく考えている方です。

日本人が海外にどんどん出て行っている現在、日本人の美容師さんが海外のサロンで働くチャンスは広がっています。それでも一歩踏み出すには勇気がいることですが、黒島さんのような方を見て自分もやってみたい、と思う人は多いのではないでしょうか。黒島さんのミラノで、NYで、また日本での今後のご活躍、応援しています。

Date of Interview : 26 April 2016

Interviewed by : Natsu Nakaishi ( Orange Career )

この記事の著者

Natsu NakaishiOrange Career 代表

大学卒業後日本で就職し、2004年にベルギー事務所へ赴任。ベルギー国内でのキャリアアップを果たし、イタリア事業所の部署スタートアップに抜擢される。並行して海外キャリア12年の経験を活かし、海外で働きたい女性のための情報サイト Orange Careerを立ち上げる。
英語圏の滞在経験ゼロから英検1級‣TOEIC950点取得、フランス語DELF B1他、オランダ語・イタリア語習得のマルチリンガル。

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