Interview 11 フィレンツェで日本語教師

今回は中部イタリア、美しいフィレンツェの街で日本語教師をされている柴山志保さんにインタビューしてきました!

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柴山志保さん Profile

フィレンツェ在住。大学時代社会科学部でマスコミを履修イタリア語を履修、一か月間イタリアに滞在。卒業後、1年間フィレンツェに留学。帰国後ホテル勤務を経て、再びイタリアへ。留学中からホテル勤務、結婚を経てフィレンツェの語学学校で日本語教師として活躍中。

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Orangecareer Nakaishi(以下、N): イタリアに移住するきっかけがフィレンツェ留学だったという事ですが、それは学校を卒業してからですか?

柴山志保さん(以下、柴山): はい。高校生のころから世界史がすごく好きで、いつかイタリアのモニュメントや芸術作品の実物を見たいと思っていて、大学生のうちに一度イタリアに旅行へ行こうと決めていました。大学の専攻は社会学部でマスコミュニケーションだったのですが、第二外国にイタリア語があって、コーヒーひとつイタリア語で注文出来たらいいなと思って履修しました。

その時のイタリア語の教授に大変よくしてもらって、イタリアに行ってみたいという話をしたところ、「若いのだし時間があるなら、一か月間位自分で行ってみてはどうか」と言われました。それでローマの語学学校に2週間、その後ローマ以北を2週間かけて旅行し、計1か月滞在しました。その時に、イタリアという国、特にフィレンツェという街がとても気に入って、それで卒業してからフィレンツェに留学しました。

N : なるほど。卒業後にマスコミ業界に行こうとは思わなかったのですか?

柴山 : それもあったのですが、長期で留学となると20代後半になってからよりは今行った方がいいのではと当時は考えていたのと、マスコミ関係というのは新卒だけではなく中途採用も多く経験値を買ってくれる所が多かったので、こうした経験が帰国後のプラスになればと思っていました。

N : 1年間の留学予定が今の旦那様に出会って変わったんですよね。もうその時に結婚すると決めていたのですか?

柴山 : いえ、さすがに1年では決められなくて。ただ、このまま離れたくないというのはありましたし、語学の面でも1年でそれなりに喋れるようにはなりましたが、もっと掘り下げられるのではという思いがありました。ビザの関係で一旦日本に帰り、日本のホテルのレセプションとして9か月ほど働いていたのですが、また学生ビザを取り直して、もう1年だけチャレンジしてみようとフィレンツェに戻ってきました。

2回目に戻ってきたときにはフィレンツェ大学付属外国人学校で、語学の授業プラス歴史や美術史の講義もあって、教授が美術館を案内してくれる機会などもありました。

N : もともと興味があった歴史なども学べたわけですね。

柴山 : はい、すごく充実していました。それと並行して、仕事を探し始めました。イタリアで仕事を探す場合は、募集している所に応募するのではなく、自分が興味がある所に自分で履歴書を持っていくのが一番なんです。

N : 持っていくというのは、つまり訪問して手渡しということですか?

柴山 : そうですね。今はEmailで送る事もあるのですが、イタリア人は人と人とのつながりを大事にする所があるので、特に小さいお店などはそこに責任者がいればラッキーだし、いなくても秘書の方に手渡しします。少しでも日本と関わりがありそうなホテルやお店を訪問しました。それで、あるホテルに履歴書を持っていたのは4月なのですが、夏になってから連絡をいただきました。すぐ連絡がこなくても忘れたころに連絡が来ることもあります。

N : イタリアらしいですね。ところで2回目にイタリアに来てすぐに就職活動を始めたという事は、もうその時にはしばらくフィレンツェに残りたいと思っていたわけですね。

柴山 : そうですね、できれば学生ビザから仕事を見つけて就労ビザに切り替えたいと思っていました。

N : ホテルではどんなお仕事を?

柴山 : 日本人団体客がよく宿泊するような大型ホテルだったのですが、その中にあるブティックで働き始めました。学生ビザだったので週20時間のアルバイトで、日中は学校に行って、夕方から夜遅くまで働いていました。ホテルのお客様というのは日中はホテルにいませんので…。

N : 結構ハードな生活ですね。仕事はどうでしたか?

柴山 : 海外で働くのが初めてだったので、新鮮で楽しかったです。お客様も日本人やイタリア人だけでなく世界中から来ますし、色んな国の人達と話せるのは楽しかったです。イタリア人のスタッフと働くのも初めてでしたし。友人とは違うイタリア人ということで、戸惑う事もありましたがいい経験でした。

N : そこではどの位お仕事を?

柴山 : 学生ビザが切れる頃に結婚することを決めて、もうビザや就労時間の制限はなかったのですが、結婚後2年半ほどして日本人観光客が減ってきてしまい、契約が切れた時に更新されませんでした。それで次は自分がやりたいことをやろうと思い、大学時代に日本語教師の資格をとっていたのですが、それをやろう、と。

N : 大学の時に日本語教師の資格をとっていたんですか。

柴山 : そうですね、国際関係に力を入れている大学でそういう機会がありました。それで、フィレンツェの語学学校に履歴書を持って行って、その時はすぐに連絡をもらって日本語教師として働き始めました。

N : 語学学校で日本語のクラスがあるところは沢山あるのですか?

柴山 : あまりないですね。でも日本語のクラスがなくても、英語とかフランス語などのクラスがある所に、日本語クラスを開講してくれればと思って履歴書を持っていきました。そういう学校の一つに連絡をもらいました。日本ブームも手伝ってだんだん生徒さんも増えていって、日本語クラスも増えていきました。

N : 今もそこでお勤めなんですよね。週に何回位クラスがありますか?

柴山 : 今はクラスを3つもっていて、後は個人レッスンがあります。それから日本人会で日伊夫婦のイタリア人のご主人達に日本語を教えています。

N : 語学学校の生徒さんはどんな方が多いですか?

柴山 : 年齢層はまちまちです。クラスが開講した当初はホテルやレストラン勤務の方など、仕事で日本と関わりがあって、とういう方が多かったのですが、だんだん個人的な趣味で日本語を習う人が増えてきました。特に最近は日本のアニメの影響で、10代の生徒さんも多いです。今アニメはテレビではなくインターネットで見る人が多くて、ネットだと吹き替えではなく字幕なのでそれで、日本語を習いたいという人が増えていますね。

N : アニメの影響はすごいですよね。授業はどんな感じですか?

柴山 : やはり日本人の私達とは違う視点を持っているので、授業中に普段日本人が気が付かない所を指摘されたりするので、面白いですね。

N : 日本語教師という仕事は面白そうですね。

柴山 : 仕事ですけど、すごく楽しいです。ホテルの仕事の契約が切れたときはやはりショックでしたけど、今思えばチャンスだったのかもしれません。すぐに語学学校から連絡をもらえて、生徒さんがだんだん増えてきて、タイミングが良かったのだと思います。

N : 今はその学校と契約しているという形態ですか?

柴山 : そうですね、毎月決まった授業のコマ数に対するお給料をもらっていて、後は個人レッスンなど追加分が加算される形です。

N : 仕事でしんどいと思う点はありますか?

柴山 : やはり契約のことですね。難しい契約書を完璧に理解するのは大変ですし、自分が納得の行くまでちゃんと説明をしてもらったり、交渉しなければなりません。お給料にしてもちゃんと確認しないと間違っていることがあります。イタリアの場合は、何か疑問があったら、自分が間違っているかもしれないけども、ちゃんと相手に確認した方がいいですね。

N : 同僚の方は皆イタリア人ですか?

柴山 : そうですね、元々は外国人向けのイタリア語の語学学校なので他の先生はイタリア人です。ただ、私の他に日本人の先生が数人いらっしゃいます。

N : ということはすごく沢山日本語のクラスがある?

柴山 : そうです、毎日あります。初級クラスは生徒が20人位いることもあります。私もそんなに需要があるとは思っていなかったので、趣味程度の仕事になると思っていたのですが、意外にも(笑)。どんな資格が役に立つかわからないですよね。

N : ほんとですよね。大学の時にとっておいて良かったですね。

柴山 : 卒業資格より役に立っています(笑)。世界的に日本語を習いたい人は増えているようで、日本語教師になりたいという人だけでなく、海外に出たいと思っている方にはいい資格かもしれません。資格がなければなれない職業ではないですが…

N : でも日本語って本当に教えるという事を勉強して資格をとった人でないと難しいと思うんですよね。例えば私はヨーロッパの数か国語を勉強してきたのですが、英語やフランス語などに比べ、日本語って文法が曖昧だと思うんですよね。なぜこうなのか?と聞かれても説明できないような気がします。

柴山 : そうですね。日本で国語の授業ってほとんど文法を教えないですよね。確かに母国語だからといって皆が教えられるわけではないですね。

N : それに日本語って習得に時間がかかるし、アニメで話される日本語と、授業で習う日本語は少し違ったりしませんか。

柴山 : 生徒の皆さんは英語やフランス語は数か月習えばコミュニケーションがとれるようになるのに日本語はできない、って言いますね。習い始めの時は「です・ます」の日本語を教えているので、すぐにはアニメの日本語を理解はできないです。それでも続けていけばわかってくるようになるし、皆さん好きで習っている人が多いので長い期間続けられるようですね。

N : 好きな事はそれがモチベーションになりますよね。

N : イタリア人と働くのはどうですか?私も今イタリア人と働いていて、彼らなりの良い所は沢山ありますし、人それぞれでひとくくりにはできませんが、傾向として「よそ者を受け入れない」「個人プレー」な人が多く手を焼いているのですが(笑)。

柴山 : よくわかります(笑)。今はイタリア人といっても生徒さんが相手なのでそういうことはないのですが、以前ホテルで働いていた時に感じたのは、イタリア人が最初に言うのが「私のせいではない」ということです。日本人の心遣いというか、他人のせいにしないというのはとても好きだし、忘れてはいけないと思うのですが、ここではそれが通用しないということを学びました。イタリア式にすると自分が嫌な人間になるような気がするのですが、そうせざるを得ないというか・・・

N : わかります。

柴山 : でもイタリア人の良い所は、どんなに揉めても数日すれば忘れることですね。そういう点で気は使わなくていいので楽です。それに仕事よりまず家族というのがあるので、例えば他の人の家族が理由で何か買った場合に必ずわかってくれてカバーしてくれますし、その辺は日本よりもいいかもしれません。

N : イタリアに住んでいて良かったと思う事は?

柴山 : 多分日本にいるよりも、自分が素でいられることですかね。たまに日本に帰国すると年齢とかそういったことに厳しいと感じます。イタリアでは年齢とか性別で判断されることがないですし、他人の事をあまり気にしないので、30歳をすぎたからこれは辞めた方がいいとかいう周りの目もないですので、やりたいと思ったことを皆自由にやっています。

あとは、仕事以外で時間的な余裕があるのと、イタリア人は楽しみ方を知っているというか、週末の過ごし方などが色々ありますね。私達夫婦はワインが好きなので、キャンティのワイナリー巡りなんかによく行きます。

N : いいですね!トスカーナは美味しいワインが沢山ありますよね。 逆にイタリアに住んでネガティブな所は?

柴山 : イタリアは法律が月単位で変わりますし、どうやって国が成り立っているか私も不思議なんですが(笑)、計画通りに事が進まないことだらけです。

日本語の教科書に「残業」とか「ストレス」という言葉が出てくるのですが、イタリア人はピンとこないですね。それはイタリアの良い所ではあるのですが、でも日本でそういった働き方をして皆ががんばっているからこそ、便利な日本の社会があるのであって、どちらが良いかと言ったら真逆でわからないですよね。

N : その通りですね。どの国でも良い事ばかり、悪い事ばかりというのはないですよね。

柴山 : 最初にイタリアに来た時は憧れの国だったので、良い所ばかりに目が行ってたのですが、二回目にフィレンツェに来た時は、社会の一員として働き始めたせいもあり、ネガティブな所ばかりに目が行ってしまいました。やはり仕事場という、友人同士で楽しくすごすだけではない利害関係で成り立つ同僚との人間関係や、社会の現実なようなものが見えてきてしまいました。結婚してずっとイタリアで暮らそうと決めてからは、なるべく良い所を見るようにしてきたので、段々と嫌な所が気にならなくなってイライラすることは減りました。

N : 私もイタリアに引っ越してきた当初、この国特有の物事の進みの遅さや慣習にイライラすることは多かったです。私がイライラした所で物事は動かないし誰も得をしないので、途中から考えるのをやめましたが(笑)。

柴山 : イタリアが嫌いだったころ、どうしても「日本はこうなのに」って比べてしまって。ただ、比べても仕方がないというか、日本と比べて同じだったらわざわざ海外に出る必要はないわけですよね。海外で暮らす、海外で働くというのはその国の良い点を認めることが大切なのかなぁと思います。

N : 同感です。最後に、イタリアで働いてみたい人にアドバイスがあればお願いします。

柴山 : 日本社会というのはその人の限界を決めることが多いと思うんです。でも本当はそうではないかもしれないので、海外で試してみるというのは一つの選択だと思います。

もしそれがイタリアであれば、イタリアは人間関係が大切なので、少しでも多く色々な人と知り合いになって、ネットワークを広げて行くことが大事なのではと思います。

(終)

 

インタビュアーコメント: 留学だけの予定が、結婚のためイタリアに移住することになった柴山さん。好きで留学していた国でも、ずっと住むとなると苦労は多く、憧れだけではやっていけません。特にイタリアでは若年層の失業率がとても高く、外国人である日本人が職を得るのは困難な事。それでも自分で積極的に職探しをし、契約終了という困難を乗り越えたのち、日本語教師という天職を得て、イタリアの良い所、悪い所すべてを飲み込んで仕事もプライベートも楽しんでいるようです。柴山さんの仰る通り、日本語教師は海外で働くことを目指す人にとって良い選択肢だと思います。日本語、日本文化の広め役として、今後も頑張って欲しいです!

Date of Interview : 22 May 2016

Interviewed by : Natsu Nakaishi ( Orange Career )

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この記事の著者

Natsu NakaishiOrange Career 代表

大学卒業後日本で就職し、2004年にベルギー事務所へ赴任。ベルギー国内でのキャリアアップを果たし、イタリア事業所の部署スタートアップに抜擢される。並行して海外キャリア12年の経験を活かし、海外で働きたい女性のための情報サイト Orange Careerを立ち上げる。
英語圏の滞在経験ゼロから英検1級‣TOEIC950点取得、フランス語DELF B1他、オランダ語・イタリア語習得のマルチリンガル。

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