海外で働く

Interview 13  ドイツ・ベルリンでワーホリから就職へ

今回のインタビューは、ドイツの首都ベルリンでワーキングホリデーから見事現地で就職に成功したS.Nさんです。

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S.N.さん Profile

子供時代をドイツ・フランクフルトで過ごす。帰国し高校卒業後、IT系の会社に入社。人事部経験後、広報に移り社内報の編集を担当。その後出版社等に転職。2014年ワーキングホリデーでベルリンに渡り、現地で見事就職に成功。現在はパソコン周辺機器販売会社で日本市場などを担当。

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OrangeCareer中石(以下、N) 現在ベルリンでお勤めをされているということですが、学校を卒業してからのヒストリーを教えてください。

S.N.さん (以下S) : 高校卒業後、IT系の会社に入社し、人事部で働いていました。しばらくして広報へ移り、社内報などを担当するようになりそこで広報や編集の仕事が面白くなって、後に出版社に転職しました。

N : 出版社ではどのようなことを?

S : ファッション誌を出版する会社でしたが、私は広告部門におりまして、企業のパンフレットやプロモーション冊子などを作成していました。仕事はすごく面白かったのですが業界の忙しさは想像以上で、朝9時半に出社して深夜まで働くのが普通で、たまに9時頃に終えられたときはそこから遊びに行くような生活でした。それでだんだんと、この先10年この生活を続けられるかと考えて、また人事の仕事に戻ることにして別の会社に転職しました。

N : マスコミや出版業界は特に残業が多い業種ですよね。

S : 出版社から転職をする時に少し休みがあったので、ベルリンに2週間位旅行に来まして、その時に何て良い街なんだろうと、とても感激しました。転職して他の業界で人事の仕事に戻ってからもベルリンのことが忘れられず、ワーキングホリデーのビザも取れる歳ですし、行ってみようかという気持ちが強くなってきました。

私は小学校の時に父親の仕事の都合でドイツのフランクフルトに3年半程住んでいまして、ドイツ語は趣味程度に続けていたのですが、そこからは猛烈にドイツ語を勉強しなおしました。

N : 子供の頃からドイツ語の素養はあったのですね。

S : その時はかなり喋れましたが、日本に帰ってからほぼ忘れてしまいました。細々と続けてはいたのですが、ベルリンに行きたいと思い始めてからは、週末は一日中ずっと図書館で勉強するような日々でした。

N : ドイツというよりは、ベルリンに来たかったのですよね。

S : そうです、ベルリン以外にはあまり興味がなかったですね。他のドイツの街はキレイで、きちんとしてて、ドイツ料理がどーんっと出てくるような…共通の雰囲気があります。でもベルリンは全く違いました。街は汚いし人も色々で、でもすごく自由でお金がなくても幸せに生きていける所です。

N : ワーホリで来たのはいつごろですか?

S : 2014年の初めです。最初は語学学校に行ったり、日本食レストランでアルバイトをさせていただいて、あっという間に1年経ってしまいました。ワーホリのビザが切れてもしばらくはベルリンにいたいと思い、その間に就職をしようとネットなどで探していたのですが、本当に求人の数がなくて。1年間で私が応募できるものは2件しか見つけられませんでした。今、そのうちのひとつで働いています。

N : どういった仕事を探していましたか?

S  職種は問わなかったです。他の国もそうかもしれませんが、ドイツで外国人が就労ビザを得るには、その人でなければならない必要があります。私の日本での職務経験はあまり活かせないと思ったので、日本人であることで応募できる所でしたら職種問わず探していました。

N : それで2件しかないとは、随分少ないですね。ベルリンはドイツの首都ですしもう少しあってもよさそうですが…。

S 日本人が少ない街だからでしょうか。日本人でもアーティストの方などは多く住んでいますが、日本企業は少なく企業関係者はあまりいないようです。

採用してもらった今の会社は、パソコン機器やアクセサリーなどをアマゾンやE-bayなどのネット販売をしているドイツの会社で、当時会社が日本に進出したかった時期だったので、日本の市場調査とか日本のお客様や日本のアマゾンの対応などを担当するポジションの募集でした。私が採用してもらった理由は語学力だけだったと思います。

N : 具体的にはどんなお仕事を?

S : 日本から買って下さった方の質問や苦情は日本語で来るのでその対応や翻訳作業、後は日本でどんな商品が売れているかなどネットで調査するなどです。ただ、日本のお客さんはまだまだ少ないので、私の業務の中では20%ほどです。その他はドイツや他の国の市場をドイツ語や英語で対応しています。

N : 1年働いてみてどうですか?

S  : 今の会社はとてもインターナショナルで、イタリア・フランス・スペインなどの市場に対応するためにそれぞれその国のスタッフがいます。日常で色んな国の人と働いたり、同じ目標に向かって作業をするような経験がなかったので、すごく勉強になりました。

例えば、最初はスペイン人のスタッフの仕事の粗さとか、休憩の多さとか、仕事中皆を巻き込んで大声で喋るようなことなどがすごく気になっていたんですね。ただ、この前スペインに旅行に行ってみて、国民みんながこういう感じなんだ、とわかりまして(笑)。これは変えられることではない、と。自分とは違った価値観とか考え方を学ぶことができ、こうしたインターナショナルな環境はすごく好きですね。

N : ドイツ人と働くのはどうですか?

S  : 私にとっては楽です。ドイツ人は何かが起こると、「すぐ解決しなきゃ」ってなるんですよね。お客さんからの苦情とか、社内での小さな問題などもすぐ解決しようとしてくれます。それに上下関係もあまりないですし、後で陰で何かを言われるようなことがないですね。その反面、すごくはっきりしていますが。

N : 例えばどんなことがありましたか?

S  : 例えば‥「この仕事をできるか?」と聞かれて、なんとなくできると言ってしまい時間通りできなかった場合にすごく失望を露わにしたり怒られたりします。できないのだったら先に言え、というようなことをはっきりと感情を露わに言ってきますね。

N : 他に日本と比べてこれはちょっとやりにくいと思う事はありますか?

S  : 集中力が続かないことですね。日本だとあまり休憩もなく黙々と働くことが普通だと思いますが、彼ら、特に南欧の人は休憩がとにかく多い、長い。周りの人を引きずり込んでまで50分位ずっと喋っていたりとこちらが集中できないので、周りを気にしないことが大事だとは思います。

N : ドイツで働く上でのメリットはどうでしょうか?

S  : 残業がないことです。会社も簡単には認めないですし、逆になぜ時間内に終わらせられないかと言われてしまうので、毎日定時で帰ってます。それと、社会保障がしっかりしています。風邪を引いて休んでも有給休暇から引かれることはないですし、医者にかかっても医者代や処方箋までタダなので、ちゃんと税金払っているんだっていう実感がありますね。休みも多いですし、例えば先週の金曜日にすごく天気が良くて、「太陽に当たってきなさい」と言って2時に帰してくれたり、ということもありました。

N : それはすごい!ドイツとはいえ、あまりない事だと思いますが…

S  : かなりフレキシブルな会社なんだと思います。

N : 生活面ではベルリン暮らしはどうですか?

S  : 良い点は沢山あります。まず物価が安いです。あと湖が多くて、夏は仕事の後に泳ぎにいったりとか自然に囲まれています。それとインターナショナルなので、いろんな文化に触れられます。トルコ人がやっているスーパーとか、ロシア人や東欧の人がやっているスーパーなどがあって色んな食材が手に入りますね。

N : 日本食のスーパーはありますか?

S  : ないですが、アジア系のスーパーがあるので困らないですね。それからクラブやライブが沢山あって、すごく安いです。お金をあまり使わずに生活を楽しめます。あと虫がいない(笑)

N  : ゴキブリとか蚊とかですね(笑)。逆に暮らす上でデメリットはありますか?

S  : 時間の流れがゆっくりしていて、残業もないし自分の時間がすごく沢山あるので、自分のリズムが良い時は良いのですが、そうではない時、落ち込んだり嫌なことがあった時などに考える時間が多くてずっと停滞してしまいますね。

それから冬はマイナス10度位になるので、すごく寒いですね。ただ、それに負けない位夏が良いです。

N : 今後はどうしていきたいとお考えですか?

S  : 今の仕事は日本にいた時程難しい仕事ではないので、もう少し変化が欲しいですね。社内で違った仕事をしてステップアップを目指すか、他の会社に転職してもいいですし。

N : ベルリンで?

S   今はベルリン以外では考えられないですね。

N : 今労働ビザはどうしていますか?

S  : 労働ビザは契約書に基づいているので、3年までは毎年更新していますが、3年目から更新の必要がないビザになります。ただ、会社にリンクしているのであくまで今の会社で働いていれば、の話です。何年か勤務すれば永住権がとれるらしいですが(注1)。今の所はこの先日本に帰るのか、帰らないのか、帰るならいつ帰るのか、悩む所です。

N : よくわかります。ベルリンに永住することはまだ決めていないのですね。

S   まだ決めていません。ただ、日本に帰るのならあまりベルリンに長居をしない方がいい、35歳になる前に帰った方がいい、などとは色んな人に言われましたが…。ドイツにいると、自分の歳を気にする場面がないので忘れてしまいますけどね。同僚の年齢も知りませんし。

N : そうですね。ただ、日本社会も変わってきていますし、特に女性の就労状況は変わってきていますから一概に言えないですが、同じ35歳でも就労経験が浅い人と、日本と海外両方で就労経験を積んだ人とでは仕事の得やすさは全く違うと思います。

S  : そうかもしれませんね。あと1,2年のうちに決めたいとは思っています。

N : 海外にいて一番良かったと思えることは?

S  : 難しい質問ですが…色んな国の人に会えて、色んな価値観を知ったり色んな国の味を知ったり、ヨーロッパ中簡単に旅行できて、経験を積めることでしょうか。

N : 海外に出たいと思っている人にアドバイスがあればお願いします。

S  : 海外に出るという事は、今まで日本で当たり前のように受けていたサービスや情報が得られず、自分で一から調べなければならないので大変というか面倒くさい事が多いと思います。ただその面倒くさいことを避けてはいけない、自分で動かなければならないということを意識することが大事ではないかと思います。

(終)

(注1)…就労ビザの状況については該当国の法律が変わる可能性があります。

インタビュアーコメント: 海外で働いてみたいという若い人にとって、ワーキングホリデービザは取得しやすく、入り口として良い選択です。ただワーホリには期限や労働時間の制限があり、その後もその国に残りたい場合はビザを出してくれる会社に就職するなど、ハードルが高いのが実情です。特に日本人が少ない地域では求人の数も多くなく、S.N.さんのように職種に拘らずに間口を広げるフレキシブルさや、語学など自分の強みを磨くことは必要です。見事就職に成功したS.N.さんの経験談、皆さまにも参考になるのではないでしょうか。

OrangeCareerでは、S.N.さんように海外に就職し、いつか日本に帰るのか、そのタイミングなどこれからを悩む人のための特集を企画しています。ご期待下さい!

Date of Interview : 28 May 2016

Interviewed by : Natsu Nakaishi ( Orange Career )

ABOUT ME
Natsu Nakaishi
大学卒業後日本で就職し、2004年にベルギー事務所へ赴任。ベルギー国内でのキャリアアップを果たし、イタリア事業所の部署スタートアップに抜擢される。並行して海外キャリア12年の経験を活かし、海外で働きたい女性のための情報サイト Orange Careerを立ち上げる。 英語圏の滞在経験ゼロから英検1級‣TOEIC950点取得、フランス語DELF B1他、オランダ語・イタリア語習得のマルチリンガル。